こんにちは、MNTSQ株式会社セキュリティ推進室の北村です。
セイ・テクノロジーズ株式会社・株式会社K-model共催のオンラインセミナー「実際どうやる? ISMS取得企業がSCS評価制度に対応するためのセキュリティ運用設計」(2026年5月22日開催)に参加しました。
「SCS評価制度」という名前はここ最近よく耳にするようになりましたが、「ISMSと何が違うの?」「本当に対応が必要なの?」という疑問を持っている方も多いのではないかと思います。このレポートでは、参加を通じて理解したことや気づきをまとめてお伝えします。
なぜセミナーに参加したのか
MNTSQは、SaaS型契約管理プラットフォーム「MNTSQ CLM」を提供しています。すでにMNTSQ CLMをご利用いただいているお客様には大手企業も多く、そうした企業のサプライチェーンの一端を担う「受注側」でもあります。
弊社ではISMS認証(ISO/IEC 27001)を取得しています。お客様からお預かりする重要な情報をしっかり守るために、ISMSの枠組みに沿って本質的にセキュリティを高めることが取得の動機であり、認証はその結果として位置づけています。
こうした取り組みの先にある目標は、大きく2つあります。ひとつは、既にご利用いただいているお客様にこれからも安心して使い続けていただくこと。もうひとつは、新たに契約管理サービスをご検討いただく企業様に、安心してMNTSQ CLMを選んでいただけることです。
SCS評価制度も、発注企業が受注企業に対してセキュリティ水準を取引条件として提示する枠組みです。「私たちはどういう水準でセキュリティに取り組んでいるか」を示せることは、お客様への誠実な説明責任のひとつだと考えています。
また、SCS評価制度は経済産業省が2026年度末頃の制度開始を予定しており、業界全体での注目度が急速に高まっています。制度の実態を早めに把握しておきたいというのが、今回のセミナー参加の動機でした。
改めてSCS評価制度とは
SCS評価制度の正式名称は「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」です。経済産業省が推進する、日本のサプライチェーン全体のサイバーセキュリティを向上させるための仕組みです。
本制度の目的については、セミナーのスライド「SCS評価制度 本来の目的」が非常にわかりやすく整理していました。

目的はシンプルで、企業単体ではなく、サプライチェーン全体での「防御力」と「回復力(レジリエンス)」を高めることです。評価の段階としては★3と★4が設けられています。
- ★3:一般的なサイバー攻撃を想定し、全サプライチェーン企業が最低限実装すべき基礎的な対策(要求事項26件・専門家確認付き自己評価)
- ★4:供給停止や情報漏えいなど影響の大きい攻撃を想定し、取引先管理・インシデント対応等を含む包括的な対策(要求事項43件・第三者評価)
★3ではすべてのサプライチェーン企業に基礎的な防御の底上げが求められ、★4ではより高度な脅威への包括的な備えが求められるという二段構えの構造です。
ISMSとの違い:抽象から具体へ
セミナーで最も勉強になったのが、ISMSとSCS評価制度の違いについての解説でした。
ISMSは「フレームワーク型」、SCSは「実装指定型」
ISMSは「マネジメントシステム」です。組織が自らリスクを評価し、「リスクに応じた適切な手段」を選んで実施するという構造になっています。要求事項は意図的に抽象的で、組織の規模・業種・リスク環境に合わせた柔軟な対応が可能です。
SCS評価制度はその発想が異なります。「適切な手段を選びなさい」ではなく、「この要件を実装しなさい」という形で、数値・期限・手順まで踏み込んで具体的に規定されています。
セミナーのスライド「ISMSとSCS評価制度の代表的な要求事項比較(★3)」には、この違いが対比の形でまとめられていました。

ISMSは「何をするか」を組織が自ら決めるものですが、SCSは「どうするか」まで定めているイメージです。スライドを見ると、ISMSが「リスクに応じた適切な手段で対処する」と書くところを、SCSは「CVSS基本値7.0以上は14日以内にパッチを適用する」と数値で明示しており、その具体性の差は一目瞭然です。
両者は対立しない
重要なのは、ISMSとSCS評価制度は対立するものではなく補完関係にあるという点です。セミナーでは「ISMS取得済みの企業であれば、SCS★3の要件の6割程度はすでに満たしている状態にある」という肌感覚も紹介されていました。
ISMS取得済みの組織にとっては、これまでの積み上げをそのままSCS対応の出発点にできるという、心強い話でした。
気づき・所感:目的が大事、手段を目的化しない
セミナーを通じて最も強く印象に残ったのは、講師の近藤誠司さん(株式会社K-model)が繰り返し強調していたこのメッセージです。
「目的が大事。手段を目的化しない」
SCS評価制度への対応も、ISMSの維持も、あくまでセキュリティの実力を高めるための「手段」です。評価の取得を目的にした瞬間、本来の「防御力と回復力の向上」という目的が霧散してしまいます。
「特定の製品を導入しないとSCS評価が取れない」という誘い文句も同様です。製品導入の目的を見失うと、コストをかけても実態が伴わないセキュリティ対応になりかねません。
一方で、SCS評価制度には「具体的であること」のメリットもあると感じました。「なぜこの対策が必要なのか」を数値や根拠とともに説明しやすくなるため、社内への説明・合意形成がしやすくなります。抽象的な「リスクに応じた対策」よりも、「SCS★3ではCVSS7.0以上の脆弱性に14日以内のパッチ対応を求めている」という具体的な根拠のほうが、経営層への説明においても説得力を持ちやすいのは事実です。
ISMS取得済みの組織として、私たちが意識すべきは「評価を取りに行く」ことではなく「足りていないところを実態として埋める」ことだと整理できました。
おわりに
SCS評価制度はまだ制度開始前の段階ですが、要件の方向性はすでに公開されており、対応を検討し始めるのに遅すぎるタイミングはありません。ISMS取得済みの組織であれば、差分の特定から始めるのが現実的なファーストステップだと思います。
このレポートが、同じようにSCS評価制度を調べているセキュリティ担当者の方の参考になれば幸いです。
なお、SCS評価制度は任意の制度です。「評価を取得していないと取引ができない」「今すぐ取得しないと入札から除外される」といった勧誘を受けた場合は、制度の趣旨とは異なります。経済産業省からも注意喚起が出ていますので、情報収集の際はご注意ください。
本記事は、セイ・テクノロジーズ株式会社・株式会社K-model共催セミナー(2026年5月22日開催)の内容をもとに執筆しました。スライド・資料の引用元は同セミナーです。
セミナーのアーカイブ配信はこちらからご覧いただけます。 https://www.say-tech.co.jp/seminar-archive/saytech-seminar-sys-op-20260522